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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第6章 愛の唄 Ⅴ




「……っ。そんなふうに考えるまでに、君に何があったの……?」
「おや。まだ私に踏み込んできますか。これは予想外ですね。普通なら、この辺りで、それ以上立ち入るのをやめる頃合いなのですが。やはり、貴女の本質は変わらないのですね。」
「……?」
「いえ。何もありません。えぇ。貴女の言う通り、私は随分と色々なものを見ましたとも。島原の乱に、聖杯戦争、第二次世界大戦、その後世界各地で巻き起こった紛争、内乱。とてもではありませんが、この場で全てを話すことはできません。こればかりは、言葉では語りつくせないほどに、酷いモノだったと言うほかは無い。当然のように、人間が人間を殺す。為政者は護るべきはずの人民を唆(そそのか)し、扇動し、人民を戦地へと送り込んでは、殺戮を繰り広げさせる。果ては、自国の領土さえも戦場にし、そこでは多くの善良な民が血を流した。それでいて、為政者は責任逃れだ。あれだけの非道な行いをしておきながら、状況が不利になれば虚言を弄して逃げる。……結局傷つくのは、いつだって弱者だけだ。歴史の中で切り捨てられ、なかったことにされるのは、いつだって名前も無い無辜の民であり、或いはスケープゴートとして立てられた少数派の異端だ。人間はまだしばらく、そのサイクルから抜け出せない。」
 そう言って彼は、その瞳を曇らせた。きっと彼は、相当に凄惨な光景を目の当たりにしたのだろう。本気で、心を痛めているのだろう。

「でも、その願いは、もし叶っても、本当に全部がうまくいくのかなぁって……。」
でも、多分、彼の願いは、何かが違うように思う。もしも、彼の願いが、その“聖杯”とやらの奇跡の力で叶ったとしても、『全てが慈しまれる世界』には、ならないような気がして。その根拠なんて、私には分からないけれど。


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