愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第6章 愛の唄 Ⅴ
「どうしました? ぼーっとして。」
「ぅえ!? あっ!?」
気が付けば、私の目の前に、お茶とお菓子が乗ったお盆が置かれている。正確には、私の前にある長机に、だが。
彼は、当然のように私の横へ腰を下ろし、ティーカップを片手にお茶らしきものを飲んでいる。
「え、えっと……!?」
「はい。ハーブディーですが、大丈夫ですか? 香りも弱いものなので、飲みやすいとは思いますが。」
「あ、ありがとう……。」
そう言われて、私もティーカップを手に取る。一口、口に含む。うん。温かいし、味も飲みやすい。
「私のことを考えてくれていました?」
「――――ブッ!!?」
軽く、ティーカップの中でお茶を吹きだしてしまった。何というお行儀の悪さだが、許してほしい。
「ははは。いいですね、分かり易くて。」
そう言って、彼はニヤニヤと、少年のように笑った。
「……。サンタアイランド仮面に、からかってもらえるなんて、光栄です。ハイこれ、お土産です。」
そう言って、ローズのフレーバーティーとクッキー、あとは食パンを差し出した。
「薔薇の……、成程。そう来ましたか。ええ。ありがとうございます。」
一応、お土産の意図には気付いてもらえたらしい。彼はニコリと笑って受け取ってくれた。
「あれ? そう言えば、茂蔵おじいちゃんは?」
一度も姿を見ていない。できれば、ご挨拶ぐらいはしておきたいのだけれど。
「あぁ、今日は不在ですよ。というか、明日の昼頃にならないと戻りません。出張業務です。あれでもこの分教会の長ですからね。」
「あ、そうなんだ……。」
「だからこそ、こうして貴女とゆっくりと会話ができるというものなのですが。」
そう言って、天草は紅茶を飲んだ。
「貴女は、私のことが知りたいのでしょう?」
そう言って、天草はゆっくりと、蜂蜜色の双眼を私へと向けた。その表情からは、先程まで浮かべていた柔和な笑顔が消えていた。口元は紅茶のカップで隠れており、口元から表情を読むことも難しい。
「……うん。」