愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第6章 愛の唄 Ⅴ
天井はそれほど高くないが、目線よりも高い場所に十字架が掲げられている。その他の内装は、至ってシンプルだった。木製の長机と椅子が幾らか並んでおり、窓からはぼんやりとした光が差し込んでいた。それほど広い部屋ではないが、掃除が行き届いているのか、清潔な印象だ、空調は効いているのか、特別寒くは無かった。
「座っていてください。今、お茶を運んで来ますから。」
私は適当な椅子に腰かけて、大人しく天草を待つことにした。待っている間に、あの観覧車の中での会話を思い出していた。
『そうですか。……そうでしたね。貴女は、そういう人でした。』
天草は、まるで以前から私を知っているような口ぶりで話していた。
『元々は『天草四郎』という人間だったものが、戦闘能力を付与されながら、現代に現れている。それだけではありません。私たちには理性があり、独自の思考を持ちます。』
『我々は大抵の場合、知性を持ち合わせています。それはつまり、戦いに利用されることがあっても、それに対する報酬を欲してしまう可能性があるということです。』
『並行世界、パラレルワールドという言葉をご存知ですか? 私はそこで、魔術師により召喚されました。』
『ですが、戦いの中で、私は戦いの報酬を強奪しようとした。その結果が、あのザマです。』
『私は、以前の主人に対して叛逆し、本来は得られない報酬を、無理矢理にでも獲得しようとしました。その結果、武力行使の末に敗れ、命辛々、前の世界から逃げ延びました。』
思慮分別のありそうなタイプの彼が、そこまでして求めるものは何なのか? 私は、それが知りたかった。或いは、普段見せている穏やかな立ち振る舞いこそが演技で、その内面は―――――