愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第6章 愛の唄 Ⅴ
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月日が流れるのは早いものだが、年末年始ともなれば、さらに早い気がする。そんなことを思ってしまう自分は、実年齢よりも老けているのだろうか。いや、そうでないと信じたい。
当日は、気の利いたお土産をと思ったものの、よく考えれば、私は天草四郎の好みなど全く知らないことに気が付いた。何か喜びそうなものをと、自分の頭を必死に回転させたものの、浮かんだのは、茂蔵おじいちゃんがひたすらパンを頬張っている姿だった。……少し、上等なパンを買っていってあげよう。あの健啖なおじいちゃんの為に。
クリスマスケーキを買おうかとも思ったが、彼は甘いものが得意かどうかも分からないのに購入するのは危険だと思い、やめた。散々悩んだ結果、私が選んだのは、ローズのフレーバーティーと、ちょっと上等なクッキーが少量詰め合わせになっているものだった。これなら、最悪好みが合わなくとも、他人にプレゼントすることもできる。まぁ、薔薇のフレーバーティーは、サンタアイランド仮面の意趣返しという意味も込めている。どうでもいいけど。
お土産を選んでいたら、予想以上に時間を喰ってしまった。私は、分教会へと急いだ。
分教会は、以前と変わらず、ひっそりとした雰囲気を湛えている。私が呼び鈴を鳴らせば、引き戸はすぐに開いた。以前と変わらない、黒の上下を身に纏った天草四郎が、此方を見て軽く微笑んだ。
「お待ちしていました。外は寒かったでしょう? さぁ、中へどうぞ。」
台詞自体は非常に友好的だ。けれど、その雰囲気には、どこか緊張が含まれているような気がした。私がお土産も手渡さないままに、彼は進んでいく。
以前に食事を囲んだテーブルに案内されるのかと思いきや、今日は違うらしい。
「えっと……?」
この間、私が入れてもらったのは、どうやら居住スペースだったらしく、別棟へと案内された。
「この分教会の礼拝堂です。神に祈りを捧げる場所、ですね。まぁ、規模としてはかなり小さい方ですが。」