愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
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茂蔵おじいちゃんと天草四郎、そして私は、無事に分教会まで戻って来た。茂蔵おじいちゃんが、「せめてものお礼じゃ」と言って、お金の入った封筒を差し出してきたけれど、私も楽しかったからと、丁寧に断った。それでも、尚も封筒を渡そうとしてきたおじいちゃんに、「その代わり、またここへ来てもいいですか?」と問えば、「いつでも大歓迎じゃ!」と、人懐っこい、少年のような笑顔で応えてくれた。
「では、夜も更けてきましたし、駅まで送りますね。」
天草四郎が、駅まで送ってくれるらしい。
「四郎、しっかりお送りしてきてな! ワシは先に休んどるから、時間のことは気にせんでエエからな!」
茂蔵おじいちゃんに見送られて、天草四郎と夜道を歩く。
微妙に気まずいような気もするけれど、隣にいる彼は、そんな雰囲気でもない。私はどうしたらいいか分からず、半歩先を歩く天草四郎をじっと見つめる。
「私のことが気になりますか?」
誰もいない夜道に、彼の声が響いて、やがて闇に消えていく。
私は、何故か、彼のことが気になって、仕方がない。2人で観覧車になんて乗ったから、浮かれてしまっているのだろうか。
―――――いや、それは違う。思えばきっと、あの雨の中で、彼を見つけた時から、私はもう、彼が気になっていたのかもしれない。突然の別れをして、1か月間、彼と顔を合わせることがなくても、ふとした瞬間に、天草四郎を思い出していた。昨日、また会えて、私は嬉しかった。これが所謂恋なのかと問われれば、それは分からないけれど、「気になる」ということで言えば、その通りだ。私は、天草四郎が気になっている。
「――――うん。」
「おや。それは光栄ですね。」
彼は、照れるでもなく、ふんわりと笑った。その笑顔は、中性的な美男子そのものだった。