愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
「武力行使……。」
もし、武力行使の末に、彼が敗北し、手傷を負ったとすれば、あの雨の中を倒れていた理由にもなり得る。
「聡い人は好きですよ。えぇ、正解です。私は、以前の主人に対して叛逆し、本来は得られない報酬を、無理矢理にでも獲得しようとしました。その結果、武力行使の末に敗れ、命辛々、前の世界から逃げ延びました。そこを、貴女に助けられた……という訳です。その節は、本当にお世話になりました。」
彼はゆっくりと目を閉じて、再びその蜂蜜色の双眼を覗かせた。
理由は、大体分かった。でも、気になるのは、そこまでして彼が欲したものは何かということだ。彼は、自分自身のために、強欲に何かを求めるようなタイプには見えない。むしろ、どちらかというならば思慮分別のあるタイプに思える。
「それじゃあ、そこまでして、求めたのは、何だったの……?」
私の声は、震えていた。
彼は、にこりと笑って、私にその左手を差し出してきた。
私は、差し出された手を、ただ茫然と見つめるしかなかった。
「惜しい。時間切れです。」
観覧車は、地上へたどり着いてしまったらしい。