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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第5章 愛の唄 Ⅳ



「いえ。此方の話です。以前にも言いましたが、私は人間とは異なる存在です。そう……ですね。うん。物理や科学とは別の理(ことわり)、世界の不思議な力によって、私はここではない、別の世界に喚(よ)ばれました。ホラ、創作物なんかでよくあるでしょう? 魔法使いが異世界からドラゴンを召喚して、戦いに利用するような話が。今の私は、そのようなものです。しかし、私はドラゴンではない。元々は『天草四郎』という人間だったものが、戦闘能力を付与されながら、現代に現れている。それだけではありません。私たちには理性があり、独自の思考を持ちます。」
「君は、戦うための存在……?」
「はい。まぁ、私に限って言えば、争い事などあまり得意ではありませんが。」
 だから、あの日会ったこの人の身体には、古い傷だけではなく、真新しい傷もあったのだろうか。あの傷は、戦いでついた傷だったのか。それにしても、自らをドラゴンと例えた彼は、驚くほどに聡明で博識だ。魔法使いの言いなりになって火を吐くドラゴンのような、そんなおざなりな存在には見えない。
「でも、普通に話ができるし、頭も良い……よね?」
 アニメや漫画なんかでよくある、ただ火を噴くだけのドラゴンは、大抵の場合、会話もロクにできない。そんな存在と、目の前にいる彼との間には、大きな隔たりがあるように思えてしまう。
「そう言っていただき、ありがとうございます。はい。我々は大抵の場合、知性を持ち合わせています。それはつまり、戦いに利用されることがあっても、それに対する報酬を欲してしまう可能性があるということです。」
「それが、君の……、“天草四郎”の目的……?」
 彼は、一瞬だけ眼を見開いたが、静かに「はい」と答えた。
「じゃあ、どうして、雨の中、あんな場所にいたの……?」
「あれは、不可抗力でした。」

 観覧車は、ほぼ頂上へ到達した。普通ならこの辺りで夜景を見て、「綺麗だね」なんて言うのだろう。でも、今の私は、夜景なんかよりも、目の前にいる天草四郎から目が離せない。

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