愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
「どこへ行きます? まぁ、クリスマスも近いのに、傍らにいる男が私というのも、不服でしょうが、そこは大目に見てください。」
「ううん! そんな、不服なんてないよ? むしろ、私が余計な事を言ったから、帰るのが遅れることになって、悪かったなぁって……。」
「いえいえ。此方なんて、貴女を丸1日拘束してしまっていますから。まぁ、こうしていても時間が勿体無いですね。私に希望はありませんので、何処へでもどうぞ。苦手はありませんので、お供しますよ。」
「あ、ありがとう……。」
そう言えば、彼はあの“天草四郎”なのだ。そんな彼が、遊園地をひとりで回るのは気が進まないというなかなか下らない理由で、私の横にいる。何とも不思議な話だ。
改めて周囲を見回せば、クリスマスイルミネーションが輝いている。夕方になったからか、家族連れは姿を消し、代わりにカップルと思しき客が増えている。手を繋いで、「いかにもイチャイチャしています」というお客さんがいるのは、微妙に気まずい。まぁ、隣にいる彼は、そんなことなど全く、気にも留めていない風だったけれど。
「さてと、どこから回りましょう?」
それほど、どこかへ行きたいとも思っていなかったので、この園定番のアトラクションを幾らか回ることにした。空中散歩気分を味わえる園内を一周するライドに乗れば、園内のイルミネーションを楽しむことができた。園内の植物園へ足を踏み入れれば、幻想的な明かりに彩られた美しい花々を見ることができた。VR体験ができるという、期間限定のお化け屋敷に入れば、なかなかにスリリングな体験ができた。ゴーストがあんな風に襲ってきたら、それこそ恐怖でしかないだろう。その感想を彼に伝えると、「本物の怨霊は、あれほど生易しくはありませんよ」と、真顔で返された。どういうことなのか、もっと深く尋ねてみたかったが、それ以上の追及はやめておいた。彼は、謎が多い。出会った時のことといい、サンタアイランド仮面の件といい、彼には色々と尋ねたいことが多すぎる。