愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
***
「お疲れさまでした。本当に助かりました。ありがとうございました。」
着替えと後片付けを終えたところで、彼が丁寧にお礼を言ってきた。サンタアイランド仮面の件については、突っ込んだ方が良いのだろうか。それとも、流した方が良いのだろうか……。
「ううん。ヒヤヒヤしたところも多かったけど、私も楽しかったし。こちらこそ、ありがとう。」
「おぅ。お嬢ちゃんはいい子じゃのう。」
茂蔵おじいちゃんは、特に反省している様子もなく、飄々と会話に入って来た。でも、全然嫌じゃない。やっぱりこのおじいちゃん、憎めないキャラクターだなぁと思う。
「いえいえ。久し振りに、遊園地へ来れて、私も嬉しかったですし。」
「そう言ってくれると、嬉しいのぉ。ん? 折角じゃし、何か乗るか? まだ夜までにはちっとばかし時間があるし、貰った無料パスもあるし、構わんぞ?」
「うーん……。でも、ひとりで遊園地回っても……。」
「大丈夫じゃ! 今なら、四郎を無料でレンタルするしの! 本当はワシも行きたいが、もう体力の限界じゃあ……。疲れたから、ワシはしばらく、あの喫茶店で休みたい。薬も飲まにゃならんしの。あと、ケーキ食べたい。そんでもって、あのウェイトレスさんとお近づきに……、いや、最後のは冗談じゃ。だから、そんな目でワシを見るでない、四郎や。」
一体、このおじいちゃんはどこまでが本気なのだろうか。そして彼は、一体どんな目でおじいちゃんを見ていたのか……。
「そうですね。今日はずっと此方の都合に付き合わせてしまっていましたし、せめて何かお礼をしなければいけませんね。」
そう言って、彼は此方へ向き直って、微笑んだ。
「ほいじゃ、決まりじゃ! 一応、1時間か、もうちょっとぐらいしたら、適当に連絡取り合うことにしようかの!」
そう言いながら、おじいちゃんは喫茶店の中へと消えていった。およそ70代とは思えないほどに機敏な動きだった。