愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第2章 愛の唄 Ⅰ
「えぇ。契約は、此方で破棄させていただきました。」
「……、なん、で……?」
「お忘れですか? カルデアの契約形態は、特殊なものですよ。お互いの同意があって初めて、契約は成立する。つまりそれは、裏を返せば、こちら側の意志ひとつで、契約が解除可能だということです。」
聖人のような笑顔で、天草は残酷な事実を口にした。
「ならば、もはや貴様に手加減は不要だな!!」
アーチャー/エミヤが、双剣を構えながら、天草へと突進する。しかし、次々と湧き出るシャドウサーヴァントが、エミヤの行く手を阻む。しかし、そのような三下に怯む彼ではない。一対の双剣は狂いもなく敵を葬りながら、エミヤは最短距離を詰める。
「貰ったッ!」
エミヤは、天草へと斬りかかる。しかし、その剣は天草の刀によって、受け止められてしまう。しかし、エミヤはあくまでも冷静に、魔術を起動させる。
「―――――爆ぜよ!」
エミヤが上空へ跳躍すると同時に、彼の双剣が爆発する。サーヴァント1体を葬り去るのには、必要十分な威力だ。エミヤはさらに上空で弓を構え、その右手に模造品の宝具を投影させる。
「偽・螺旋剣!(カラド・ボルグⅡ)」
周囲が、強烈な爆音と爆風に包まれる。この直撃を喰らえば、どんなサーヴァントであろうとも、無事では済まないだろう。マスターである少女も、これで勝敗は決したものだと、そう思った。
―――――しかし。
「な、に……?」
エミヤが、上空から墜落する。ドスンという、嫌な音が、周囲に響く。
「お忘れですか? 私はルーラーですよ?」
巨大化した黒鍵の刃が、砕け散る。
「ルーラーの特権、使わせていただきました。ここで使ってしまうのは、まぁ、勿体無かったのですが。」
穏やかに言葉を紡ぎながら、天草は手にした日本刀で、エミヤの心臓を穿った。
「マス、ター……! 逃げ……!」
「アーチャー……!?」