• テキストサイズ

愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第2章 愛の唄 Ⅰ



「さて、マスター。もう一度問います。あの聖杯を、私に任せてはいただけませんか?」
「……ごめん、無理。」
 天草の問いかけに、少女は返答する。

「それは残念です。それではまた、マスターと戦わざるを得ないのですね。」
 汚染された聖杯をバックに立つ天草の瞳は、妖しく輝いていた。
「……、嫌! 天草……、もう、やめよう……? 私は、天草と戦いたくなんてない……!」
 少女は、叫ぶ。
「無駄だ、マスタァ。こうなってしまえば、あの手の男は聞き分けがなくなる。力で抑え込むしか、方法は無い。」
 アヴェンジャー/巌窟王が、少女と天草の間へと割り込む。巌窟王は、聖杯の泥による浸食に耐えながら、シャドウサーヴァントを屠り続けているが、それももはや限界だ。対する天草は、ルーラーの対魔力故に、比較的平気なようだ。
「天草……、天草だって、無事じゃ済まないよ……! 今なら大丈夫だから、もう、やめて!」
 少女は、叫び続ける。
「この期に及んで、叛逆した私の身を案じて、どうするのですか? 心配には及びません。以前に出くわした“あの聖杯”に比べれば、この程度の汚染など、汚染されたうちにも入りません。私の力でも、充分に制御できます。ですから、ご心配なく。貴女は、先にご自身の配下を心配されては如何でしょう? 対魔力のランクによっては、相当のダメージでしょうから。」
 そう言って、天草はトドメと言わんばかりに、清姫へと黒鍵を投げつけた。泥に足を取られた彼女は成す術もなく、そのまま消滅した。
「まずは、1体……。どうします?」
 天草は、お行儀よく小首をかしげて、少女へ視線を投げかける。しかし、その手には黒鍵がしっかりと握られている。
「……戦う。この事態は何としてでも収束させるし、天草のことだって、カルデアに連れて帰る。」
 少女はまっすぐに見つめて、こぶしを握る。令呪を発動させるべく、密かに天草へ狙いを定める。
「拘束する!」
 令呪を使った、拘束術式。どんなサーヴァントであれ、動きを止めるぐらいは容易い。
「甘い、ですね。」
「――――ッ?!」
 令呪が、反応しない。
/ 117ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp