愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
「それではまず、クリスマスとは何かについて、お話ししましょう。そもそも、クリスマスとは―――――」
胡散臭い仮面を付けた天草四郎が、クリスマスの起源やサンタクロースについて、話し始めた。大人であるはずの私も全然知らなかった話を、分かり易く解説してくれた。そして最後に、簡単なお祈りをして、終了。時間にして15分ほどだったが、長さを感じさせない時間だった。子どもたちも、彼の話に飽きる様子もなく、熱心に聴き入っていた。話し終えると、彼は舞台から姿を消した。ついでに、おじいちゃんもサンタアイランド仮面が話している途中で目を覚ましたらしく、盛大に欠伸をしていた。相変わらず、フリーダムなおじいちゃんだ。
「それでは、お待ちかねの、プレゼントです! サンタさんから、プレゼントをもらいましょう!!」
孤児院の職員たちが、子どもたちを整列させる。子どもたちは大喜びで、プレゼントを受け取って、満足そうにしていた。しかし、ひとつだけ、私の袋にプレゼントが残っている。たったひとり、職員の後ろに隠れるようにして、少女がひとり、こちらを見ていた。あぁ、そうか。この子が、例の女の子か。
「ホラ、プレゼント貰っておいで。」
「う、ぅ……。」
女の子は、職員に促されているが、1歩が踏み出せない様子だった。
「メリークリスマス。プレゼント、どうぞ。」
私も、袋からプレゼントを出して、笑顔を浮かべる。でも、女の子は職員の傍を離れようとしない。待ってみても、女の子は一向に動けない。幸い、時間はある。私は、焦らずに待つことにした。しかし、痺れを切らした職員が、「この子は、もう……。」と、苛立ち始めた。女の子は、そんな職員の雰囲気を敏感に感じ取ったようで、ビクッと肩を震わせた。