愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
――――その瞬間だった。
何の前触れもなく、一振りの刃物が降って来た。 人の腕程の長さのある刃物には、何故か薔薇の装飾があしらわれており、イベント会場の床に突き刺さると同時に、花びらが勢いよく散った。
「―――――!?」
もう、驚きの余り声すら出なかった。
「子どもたちの笑顔を護るため。駆けつけ三杯、寿司食いねぇ。」
声が響く。スピーカーから聞こえてきている辺り、マイクは使っているらしい。
「はぁ!?」
「誰だぁ?」
「サンタさん!?」
子どもたちは、さらに騒めくが、声の主は姿を現さない。いや、でも、待って。この声は……。ううん。間違いない。
―――――天草四郎……。
「サンタアイランド仮面、参上!!」
イベント会場の天井から、ひとりの男性が勢いよく、降って来た。そう、降って来たのだ。
かなりの高さがあるにも関わらず、彼はイベント会場のステージのど真ん中に、軽やかに着地を決めた。しかも、なんかこう……。目元を隠す、変な仮面付きで。しかも、いつのまにかコートを脱いでおり、代わりに、赤い服? を身につけている。確かあれは、宗教服のひとつで……。あぁ、ダメだ。この惨状を目の当たりにして、思考なんて全く働かない。
「わー! すごいぞ!」
「どうなってるんだー!?」
「かっこいい!」
一方の子どもたちは、突然の出来事に興奮しているようで、その意識は「サンタアイランド仮面」を名乗る“彼”へと釘づけになっている。
「私はサンタアイランド仮面。そこのサンタクロースさんに頼まれ、良い子の皆さんに、クリスマスについてのお話を届けに来ました。」
「えっ!? 聞きたい!」
「お話、聞かせて!」
「私もー!」「僕もー!」
先ほどまでの気まずい空気は、既になかった。