愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
「それでは、今度はサンタさんからのお話を聞きましょう! クリスマスのお話です! サンタさーん!」
ここで、茂蔵おじいちゃん扮するサンタクロースが、クリスマスに関する話を、子どもたちに語って聞かせるという予定になっていた。しかし、私の目に間違いが無ければ、たった今、とんでもない事態が発生している。……私の見間違いでなければ、茂蔵おじいちゃんは、……眠っている。うん。舟をこいでいる。どう見ても、眠っているではないか……!!!!
慌てて、裏方にいる天草に、目配せをする。いつも冷静沈着な彼ですら、「これはマズイ」という顔を浮かべている。私が代わりに話そうにも、クリスマスの話なんてそんなに詳しくないし……!
「サンタさーん……?」
司会役の職員も、いよいよ笑顔が引き攣っている。
どうすればいいの……!!?? 焦って彼のいた場所をもう一度見たけれど、彼の姿は忽然と消えていた。
子どもたちも、妙な雰囲気に気付いてしまったのだろう。ザワザワし始めた。
「あ、あのサンタ、居眠りしてるー!」
「はぁー!? 眠るなよー!?」
「最低じゃーん!」
「居眠りサンター!!」
「ぎゃははは!!」「帰れーっ!!」
いよいよもって、野次まで飛び始めた。こうなれば、どうしようもない。こうなれば、「良い子にはサンタさんが来るよ」ぐらいの、短くてつまらない話でもいいから何か喋って、私がこの場を収めるしかない! そう思って、私はパイプ椅子から立ち上がった。