愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第5章 愛の唄 Ⅳ
「それで、お義父さんはどうしてこんなところで横になっているのですか?」
彼は一応笑顔で尋ねているが、呆れているのがひしひしと伝わってくる。
「い、いやぁ……。ジェットコースターに乗りたくて乗ったら、思ったよりも激しゅうて……。」
顔を上げれば、後ろ向きかつ宙返り仕様のジェットコースター。茂蔵おじいちゃんは、あろうことか、アレにひとりで乗っていたらしい。本気で眩暈がした。
「お義父さん……。でもまぁ、ご無事で何よりです。とにかく、イベント会場へ行きましょう。」
彼は、決して体格が良いとは言えないが、筋力はそれなりにあるらしい。おじいちゃんを支えながらでも、足取りはかなりしっかりしていた。ともすれば中性的な顔立ちなのに、それは関係ないらしい。まぁ、当たり前か。
時間が来て、いよいよイベントが始まった。元々、少人数で決行する予定のイベントだったらしく、おじいちゃんと彼、私以外のスタッフは見当たらない。孤児院の職員の方々はいるけれど、教会側のスタッフは本当に私たち3人だけだった。
「はい、今日は、サンタさんが、みんなのことを遊園地へ招待してくれましたよ! 嬉しいですね~!」
孤児院の職員が、マイク片手に、ハイテンションで口上を述べている。司会進行は、孤児院の職員がしてくれる手筈になっている。おじいちゃんと私は、その司会役に促されるままに、イベント会場へと登場した。拍手と共に登場するのは少し気恥ずかしかったが、子どもたちのキラキラした笑顔を見てしまえば緊張は吹き飛んだし、嫌な気はしなかった。天草は裏方なので、ステージには上がらないが、子どもたちからは見えない位置から此方の様子をずっと見ている。
「では、サンタさんたちにプレゼントをもらう前に、みなさんから、サンタさんたちに、歌のプレゼントをしましょう!」
イベントは、特に問題なく進んでいる。茂蔵おじいちゃんと私は椅子に座って、子どもたちの合唱を聴いた。決して上手とは言えない歌だったが、きっとたくさん練習したのだろう。そう思うと、胸の辺りが温かくなった。