愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第4章 愛の唄 Ⅲ
「ぇ……。」
一体、何が「それじゃあ」なのかも分からない。このお茶目なおじいちゃんは、どこまでが本気なのだろう……。ものすごいマシンガントークで、私はどこでどう返事をしたらいいのかどころか、どこで相槌を打てばいいのかも分からない。
「お気になさらず。個室と、来客用の布団を用意しますので、ゆっくりと休んでください。あと、黒幕じゃなくて裏方です。」
彼は、笑顔でピシャリと言い切った。何だかんだで、おじいさんと彼は、軽い漫才のようになっている。そして、気が付けばここで泊まることと、私が明日の協会主催のイベントへ参加することが決定していた。どうせ、大した予定も無いのだから、構わないと言えば構わないのだけれど。
「では、先に食事としましょう。その後でゆっくりとお風呂をどうぞ。明日の話は、食事をしながらでいいでしょう。貴女がお風呂へ入っている間に、私は個室と来客用の布団を整えておきますから。」
彼は、テキパキと食事の用意を整え、食事中には明日の予定を詳細に話してくれた。おじいちゃんは、話を聞いているのか聞いていないのかよく分からない感じで、ひたすらパンを頬張っていた。およそ老人とは思えないほどに健啖なおじいちゃんだった。
「……というのが、明日の大まかな流れです。貴女に最低限出演してほしいのは、プレゼントを渡すときと、イベント最後の記念撮影のときだけです。他も手伝っていただけるなら助かりますが、信者でもない貴女にそこまでのことはお願いできませんからね。祈りの部分なんかは、何も喋らなくていいので、両手を前で組んで下を向いていてくだされば充分ですから。」
「いやはや、女の子がいるっていうのはエエね。うん。若い頃を思い出す……。」
いや、このおじいちゃん、絶対に、今の説明なんて聞いていなかった。明日はこのおじいちゃんも、サンタ役として出演するとか言っていたけど、本当に大丈夫だろうか。不安しかない。
でも、不思議なことに、私はこのおじいちゃんのことを、憎からず思っている。
これも、何かの縁なのかもしれない。流されているだけかもしれないけれど。それでも、再び“彼”と逢えた。もう、遭えることも無いと思っていた“彼”と。
それが何故か、私には嬉しくて、嬉しくて。