愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第2章 愛の唄 Ⅰ
「はぁ……っ、はぁ……ッ!」
以前にも、同じような状況はあった。汚染された聖杯が見つかり、周囲に異常をもたらすということは。
あの時は、人理修復の最中であったが故に、偶然にもDr.ロマンが異常を見つけた。少女と、シールダー、そして偶然同行していたルーラー/天草四郎が、その状況に対処して、事なきを得たのだった。しかし、問題はその過程だった。酷く汚染された聖杯は、Dr.ロマンをも驚愕させる速度で成長した。その聖杯の影響で、周囲が恐ろしい速さで特異点化しかけたのだった。そう。あろうことか、天草四郎は、その汚染された超危険物質である聖杯に手を伸ばそうとしたのだった。聖杯が欲しい、その結果自らが汚染されたとしても構わないと言い切って、人理保障機関カルデアと―――――そして、マスターである少女へと、反旗を翻した。
結局、少女らは天草の提案通り武力行使で彼を抑え込み、聖杯は鎮圧された当人である天草の手によって、跡形もなく破壊された。そして、少女はカルデアへと無事帰還したのだ。しかし、彼は言った。同じような状況に出くわせば、自分はまた、同じことをするだろう、と。それでも、少女は共に歩めると信じて、天草との契約を続行させた。
――――――そう。善良な少女は、ただ信じていた。
「ッ……!」
汚染された聖杯の中から、シャドウサーヴァントが次々と召喚されていく。少女と一緒にレイシフトしてきたサーヴァントたちも、次第に力尽きていく。少女はしきりにカルデアとの通信を試みるが、上手くはいかない。先程から、ダ・ヴィンチとマシュの声が、ほとんど聞こえない。