愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第4章 愛の唄 Ⅲ
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「まさか、また会えるとは……。」
「私も、驚いています。」
私は、彼―――――、“天草四郎”を名乗った少年? 青年? に招かれるままに、建物の中へと入れてもらっている。タオル類を貸してもらったばかりでなく、インナー以外の服も貸してもらい、さらには暖房と椅子、ブランケットまで貸してもらっている。コートは水を吸い過ぎて使い物にならないだろうと、乾燥までしてもらっており、もはや至れり尽くせりだ。
「はい、温かい紅茶です。飲めますか?」
温かい紅茶まで出てきた。
「か、かたじけないです……。」
ここまでされると、逆に申し訳ない気がしてくる。
「構いません。というか、以前は私の方が、もっとお世話になってしまい、ご迷惑をお掛けしましたので……。その節は、どうもありがとうございました。お陰様で、私はこうして健やかでいられます。」
「う、ううん。そんなことないよ。それに、あれはどちらかと言えば、私が勝手にやったことだし。」
そう言いながら、私は出された紅茶を一口飲む。舌の上でほんの少し、ピリッとした感覚があった。
「ん……? 生姜……?」
「はい。体が温まりますから。苦手でしたか?」
「ううん。そんなことない。ありがとう。……えっと……、あまくさ、さん……?」
その細やかな気遣いが嬉しかった。ついつい、名前を呼びたくなってしまった。でも、目の前にいる“彼”は、本当に“天草四郎”なのだろうか? それに、以前に彼は、自らを人間とは異なる存在であり、超常的な力によって現実世界に現れた存在だと言っていた。彼の発言を信じていないわけではないが、やはり不思議に思うことは、自然な事だろう。