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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第4章 愛の唄 Ⅲ


 天草には、過去の聖杯戦争や聖杯大戦の記憶や記録がある。そのため、そういった組織へ接触することも慣れたものであった。
 魔術的な仕掛けを施した手紙を、聖堂教会宛てに送付する。聖堂教会からの返事は、日本へ派遣されていた代行者の訪問という形で為された。天草は、逸る胸を抑えながら、周囲に結界を張り、代行者を迎え入れた。しかし、そこで天草は驚愕の事実を突きつけられたのであった。聖杯戦争は、100年近く前に、ヨーロッパの一地方都市で行われたが、それ以来聖杯らしきものは全く観測されていないとのことだった。そればかりか、聖堂教会という組織自体が、ここ数十年で随分弱体化してしまい、聖堂教会としては。過去に自分たちが入手した聖遺物を管理することで手いっぱいだとのことだった。望むような成果は得られないまま、天草はそれならばと、魔術協会とコンタクトを取った。そうして得られた情報は、天草をより落胆させるものでしかなかった。魔術協会は、数十年前に大きな権力争いがあり、その結果として優秀な魔術師たちがその命を散らせていた。後に残ったのは権力欲だけが逞しい者たちばかりということだった。それでも聖杯に繋がる情報があるならばと、天草は何度かやり取りを試みたが、聖杯どころか聖杯戦争に関わる記録さえも、権力争いによって散逸してしまっているという有様だった。これには、天草とて閉口せざるを得なかった。完全に、詰んでしまっている。せめてもの手立てとして、聖堂教会と魔術協会手を結び、聖杯や聖杯戦争について、新しい情報が入り次第伝えてほしいと依頼した。勿論、それに見合うだけの報酬も用立てるということも交換条件として挙げておいた。こうして、現状において天草が出来ることは全て行った。逆に言えば、今の天草はこれ以上何もできない。仮に、此処が本流からは外れた、枝葉の世界であったとしても、100パーセント聖杯が出現しないとは言えない。可能性は、ゼロではない。だからこそ、焦らずに己の地盤を整えながら、「待つ」ということも、重要なのだ。
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