愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第4章 愛の唄 Ⅲ
「……此処か……。」
天草が辿りついたのは、郊外にある小さな教会だった。かの一大宗教の、分教会。街の喧騒からそう離れていないのに、その場所はどこかひっそりとした雰囲気を湛えていた。
「ん……? 表札……?」
表札を見て、天草は心臓が止まる心地がした。偶然にしては出来過ぎている。でも、啓示に示された場所は、間違いなくこの分教会だ。それならばと、天草は迷わずに敷地内へ立ち入り、分教会の長へと歩んでいった。
天草が分教会の長へと会ってから、話はトントン拍子に進んでいった。長は、まるで天草を待っていたかのように、彼を歓待して、喜んで身の上話を聞かせた。分教会の長は、子宝に恵まれないまま、数年前に妻にも先立たれ、ひとり年老いていた。何とか親戚を頼って、養子を貰おうと考えていたものの、その話も同じく数年前に頓挫していた。生活のためにと、この分教会を切り盛りし、長年貯めていた資金を元手に、私立の幼稚園も数か所経営していたが、身体も幾分弱ってきていたために、それらをどうするのか考えあぐねていたところであった。長は天草の人柄をいたく気に入り、喜んで彼を自らの養子とした。そして遠くない未来に、自分が死ぬことになれば、土地の権利や経営権を全て、養子である天草へ譲渡するという契約までをも持ちかけた。こうして、天草は難なく戸籍と、自らの住居と、収入源を手にしたのだった。
生活が適当に安定したところで、天草は次の段階へ移行する。まずは、この世界について調べなければならなかった。魔術協会や聖堂教会などといった魔術系の組織と接触し、そこで何とかしてパイプを作り、情報を得ること。場合によっては、それらの組織へ所属するのも良い。特に、聖杯や聖杯戦争に関する情報を得なければならない。この世界の聖杯や聖杯戦争について詳しい情報が得られれば、この世界線について、もっと確かな情報が得られる可能性が高い。それに、その聖杯の性質を調べれば、この世界が仮に枝葉の世界で会っても、本流となる世界へ影響を与える方法も、自ずと知ることができるというものだ。