愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第3章 愛の唄 Ⅱ
「……よろしいのですか……?」
若干上目遣いで、可愛らしい仕草だが、空いたお茶碗をしっかりと前に突きだしてくる辺り、ちゃっかりしているというか、なんというか……。実は結構おちゃめさんなのだろうか……。それでも、こちらが黙ってお茶を足してあげても、「ありがとうございます」とかのお礼を欠かさない辺り、やはり育ちは良さそうだ。
「……ん、ごちそうさまでした。」
そう言って、座ったままで此方にぺこりと頭を下げてくる彼。料理らしい料理など、ほとんど振る舞っていない私だけれど、こんな風に感謝されれば、悪い気はしない。
「お粗末様でした。食後は、ゆっくり休んでいた方がいいよ。」
「ありがとうございます。あの……、何かお手伝いすることは、ありませんか……?」
「ん~。今は特にないかな。……それより、箸の扱いにも慣れてるし、食事のマナーも良いし……。見かけによらないね。」
「あぁ……。この肌の色と、髪の色でしょうか? 生まれた時はもちろん黒髪でしたし、肌の色ももっと薄い色でしたよ。私も、色々ありましたから。」
「へ、へぇ~……。」
一体、何があればここまで容姿が変化するものなのか。あとは、身体中の傷も。正直知りたいけれど、その聖人のような微笑みに、私の疑問は掻き消されてしまった。
「時間が経ったら、適当にお風呂に入って着替えておいて。」
そう言って、私はできるだけさりげなく、コンビニで買った下着と、サイズが若干大きめの私服を手渡しておいた。
「ありがとうございます。」
やはり彼は、清々しく微笑んだ。
その日は、穏やかに過ぎていった。