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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第3章 愛の唄 Ⅱ


「なるほど。あの歴史上の人物と、同じ字を書くってことですね。それなら、大丈夫です。たまにいますよね。有名人と同姓同名の人。」
「うーん……。それも間違いではないのですが……。まぁ、そういうことにしておきましょうか。」
 そう言って、“天草四郎”さんは少し困ったように笑った。
「え? だって、天草四郎って、確か……、江戸時代に、島原の乱で、処刑された歴史上の人物でしょう……?」
 歴史にそれほど詳しくない私でも、辛うじてそれぐらいは知っている。
「はい。よくご存じですね。それが、いま此処にいる私の、“元となった”人物です。」
「“元となった”……?」
「はい。私は……、そうですね。簡単に言えば、人間とは異なる存在です。歴史上の人物など、本来なら存在しない筈の存在が、超常的な力によって現実世界に現れた……とでも言えば、理解していただきやすいでしょうか?」
 目の前にいる“天草四郎”を名乗った彼は、つらつらと説明を述べた。人間じゃない? 超常的な力? それが何を意味するのかなんて、私にはよく分からない。でも、その様子から、彼が嘘を言っているようには見えない。でも、にわかには信じ難い話だ。これで、宗教の勧誘や妙な商品の押し売りで知り合ってでもいれば、すぐさま詐欺師を疑うのだけれど、彼は違う。何故か、あの雨の中を行き倒れになっていた。そう言えば、何故彼は、あの寒い夜に、雨の中を倒れていたのだろう?
「正直、全然ピンと来ないけど、なんで、あの雨の中を、倒れてたの……?」
「失礼ですが、その前に質問をよろしいですか? 此処が日本だということは理解できましたが、今日は西暦何年の、何月何日でしょう?」
「20××年の、11月××日だけど……?」
「……、成る程。」
 彼は、少しだけ驚いた顔をした後、頷いた。
「ええ。これで確信が持てました。私は、元いた世界から、偶然この世界へ跳んできてしまったようです。」
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