愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第3章 愛の唄 Ⅱ
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今日は日曜日の朝だ。連休も明日で最後だ。でも、今はそれよりも気になることがある。体を起こして、私の寝具で横たわる、彼のことだ。私は上体を起こして、立ち上がろうとする。
「おはようございます。」
「!」
慌てて、彼のいる方向を見る。彼も上体を起こし、此方を見ていた。寝起きの、ノーメイクの顔を見られているけれど、今現在の問題はそこじゃない。
「お、おは、よう、ござい、ます……?」
彼は、私の寝具の上で正座をし、此方を見た。
「行き倒れだった私を介抱してくださり、服まで貸してくださった上に、暖かい布団まで貸していただいたこと、深く感謝します。ありがとうございます。お陰様で、私は随分と回復しました。」
彼は正座をしたまま、私へ向かってゆっくりと頭を下げた。
「い、いや、そんな……。」
困ったように微笑む彼に、私は適当な返答も浮かばなかった。
「私は、この御恩を忘れません。どうか、せめて貴女のお名前を教えてはもらえませんか?」
目の前の彼は、そう言って私の名前を問うてきた。
「私? 私は、藤丸立香。」
「―――――立香―――――。」
目の前の彼は、ひどく驚いた顔を浮かべたが、すぐにゆっくりと顔を左右に振った。
「いえ、何もありません。立香さんとおっしゃるのですね。……良いお名前です。」
彼は、何か言いたそうな雰囲気だけれど、よく分からない。
「えっと、あなたの、名前は……?」
「あぁ、失礼いたしました。私は―――――、四郎。」
「ん? しろう?」
「天草四郎、と言えば、日本人ならばピンと来やすいでしょうか?」
「あまくさ、しろう……?」
いやいやいや、待ってほしい。天草四郎と言えば、日本史なんかの教科書に載っている、歴史上の人物ではないだろうか? いやいやいや、それはさすがに……、あ、そうか。