愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第3章 愛の唄 Ⅱ
「はぁ……、ぁ、っ……!」
「傷、痛む?」
「はぁ……、はぁ……、ぁ……、へい、き、です……。」
俯いて、床に座り込んだまま、彼は答えた。
「下は……、どうする……?」
さすがに、下まで脱がせては悪い気がするので、一応尋ねる。
「自分で……、しま、す、はぁ……はぁ……、から……、すみません、が……、外、で……。」
「うん。脱いだものは、その場に放っておいていいから……。」
数分待って、シャワーの音が収まったところで、用意しておいたバスタオルを、ドアを僅かに開けて手渡す。さすがに、私の自宅に男性ものの下着なんて無かったので、代わりに柔らかい素材でできたショートパンツを手渡した。あまり新しいものではないけれど、無いよりはマシだろう。
「履け……、まし、た……。」
中から声がして、私は迷わずに浴室へ入る。そこには、私のショートパンツだけを身に纏い、あとはバスタオルで適当に体を隠しているだけの彼が、壁にもたれかかりながら、やっとのことでしゃがみ込んでいた。私は、適当に彼を自室内へ誘導して、寝具へとその体を横たえる。あまりにも苦しそうだったので、服は何とかして私が着せてあげた。ついでに、血が滲んでいる箇所には、ガーゼを貼っておいた。この程度の応急処置でも、無いよりはマシだと信じたい。そして、部屋にゆるく暖房をつけて、その銀髪をドライヤーで乾かす。短い髪は、5分と経たないうちに乾き、美しくサラサラと波打った。
そうこうしているうちに、彼は眠ってしまったらしい。荒かった呼吸も、少しは収まっているようだ。この部屋には、1人分の寝具しかない。だから、名前も知らない、この銀髪の彼が私の寝具を使っている以上、私が寝る寝具はない。我ながら、無計画な行動をしてしまったと思うが、不思議と後悔はしていない。どう考えても不審者であるこの彼が、悪い人間であるようにも見えない。もし、回復したら、その時にはきちんと話がしたい。そう思って、私も就寝の支度をし、予備の掛布団やシーツなんかにくるまって、床に寝た。
見ず知らずの他人と眠るなんて、とも思ったが、私自身も疲れていたからか、眠気はすぐにやってきた。
―――――深く、深く、眠った気がする。