愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第8章 愛の唄 Ⅶ
あの時と同じ。私は、天草の両腕に抱きしめられながら、夜を過ごしている。久し振りの、天草の体温。3年前と全く変わらない、天草の心臓の音。優しい匂い。
私は性懲りもなく、朝なんて来ないで欲しいと、ただひたすらに願っている。でも、同時に分かっている。朝が来ても来なくても、この別れは、当たり前のものなのだと。出会ったことが奇跡で、その奇跡は決して長くは続かないものだと。これが、必然的な結末なのだと。
「せいはい、だっけ……? それが、見つかったの?」
天草の腕の中で、私は小さく疑問を漏らした。
「……はい。」
「手に、入るの?」
「……さぁ。そればかりは、分かりませんね。」
困ったように、天草は答えた。
「……?」
見つかったのに、手に入るかどうか分からないということだろうか?
「聖杯が見つかっても、それを手にするためには、相応の戦いが必要になります。」
「た、戦い……?」
がばりと、顔を上げる。
戦い、と言えば、天草と仮契約をしたときに見た、あの夢のようなことが、再び天草の身に降りかかるということだろうか。それは、嫌だ。
「……っや、やめて! もう……、もう、……四郎が、傷つくことなんて……ッ、っ、う、うぅ……。」
最後までは、言えなかった。言えるはずもなかった。
天草は、自分の感情を捨て去ってまで、あの夢を抱いたのだ。それを想えば、胸が痛い。ひたすらに、痛い。
「ありがとう。」
それから、私はどれぐらい泣いたのだろうか。分からないけれど、気が付けば私はそのまま意識を手放してしまったらしい。