愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第8章 愛の唄 Ⅶ
でも、そんな日々も、とうとう終わりを迎えた。私が初めて天草と出会ってから、実に3年の月日が流れていた。茂蔵おじいちゃんは、病気のためにこの世を去った。最期のあたりは、どんどん痩せ細っていって、見ている私ですら辛くなるほどだった。分教会は、茂蔵おじいちゃんが亡くなってしまってから、よりひっそりとした雰囲気が強くなった気がする。茂蔵おじいちゃんの物が整理されてしまい、物も少なくなってしまっていた。……そう言えば天草の姿は、出会った時と全く変わらない。少年のような、青年のような姿のままだ。
「3日後、私は日本を発ちます。」
宣告は、玲瓏に。あまりにも突然だった。この日は、また天草と私の休みが合ったので、私が分教会へお邪魔していた。
……あぁ、でも、うん。そうかもしれない。始まりだって、あんなにも突然だったのだから、その終わりだって、それぐらい突然でなければ、道理に合わない。私は、衝撃を受けた頭で、そんなことを考えていた。彼がそう言うのだ。きっと、遠くへ行くのだろう。恐らくは、もう会えないのだろう。漠然と、私はそう直感した。
「……そっか。うん。遠くだよね。 外国?」
「はい。」
「場所を教えてって言っても、四郎はきっと、教えてくれないね。」
「はい。」
「……っ、も……、もう……、会えない、……?」
「はい。」
泣いているのは、私だけだった。天草は、私の問いに、抑揚のない声で短く答えているだけだった。
「最後、日本にいるのは、どこ……?」
「……いえ。教えられません。私は明日の早朝に、この教会を出ますから。」
「……、そっか。」
天草は、ほんの少し躊躇った後、そう答えた。きっと彼のことだ。本当ならば、今からでも出ようと思えば出られるように、支度も終えているのだろう。
「急で申し訳ないですが、願い事も、もう有効期限がきてしまいますね。すみません。」
天草は、本当に申し訳なさそうに、眉を下げた。
「……まだ、覚えててくれたんだ。……っ、うぅ……。」
涙が、込み上げてくる。
「……泣かないでください。」
天草が、困ったように、声を紡ぐ。
「……私、明日、は……っ、し、……仕事、休む。……っ、だ、だから、今夜、は……、一緒にっ、一緒にいて……、ぃい……?」
泣きじゃくりながら、何とか言葉にした。
「はい。」
天草は、囁くように、小さく返事をした。