愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第2章 愛の唄 Ⅰ
「次!」
ダ・ヴィンチの籠手が炎を放出している間にも、別の装置が起動される。
ダ・ヴィンチの背後に展開された装置が、音を立てる。
「な……っ!?」
マスターである少女も、これには驚きを隠せない。当然だ。ダ・ヴィンチがこれから放とうとしているのは、小型のロケットランチャー十数弾なのだから。その狙いは、すべて天草へと向けられている。
因みに、サーヴァントへ通常の物理攻撃など意味を成さない。
「聖女ジャンヌと、ジャンヌ・オルタちゃんに魔力ソースの提供を依頼して作った、天才が誇る一級品だぜ?」
ダ・ヴィンチは、カルデアの聖女ジャンヌ・ダルクと、ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕へと魔力提供を依頼し、それを使ってロケットランチャーを製作したのだった。同じルーラーの魔力であれば、その高い対魔力も突破できる。アヴェンジャーの保有する特異な魔力であれば、ルーラーの防御も崩せる。
ロケットランチャーは、寸分の狂いもなく、全て天草へと叩き込まれた。黒鍵での防御もろとも吹き飛ばす豪快な攻撃には、流石の天草も成す術なく。
「ぐ……ッ。なんていう無茶苦茶を……!」
口ではそう言っているが、この短い間にも天草は防御用の魔術を何重にも展開させ、致命傷だけは避けていた。しかし、それだけだ。天草の戦闘力は確実に削がれている。彼は、戦闘可能な水準を、ギリギリ保っているに過ぎない。
「こっちは、天才だぜ? それに、大切なマスターもついてるんだ。負ける道理なんて無い。」
ダ・ヴィンチは、キッパリと言い放った。
「そう、ですね……。そうでした。」
日本刀を支えにして、天草は立ち上がる。もはや、勝敗は決したも同然だった。
「止まれ……!」
ダ・ヴィンチは、傷だらけの天草に対しても、容赦なく次の攻撃を繰り出す。天草の足元に展開される、魔力で練り上げた氷。魔力結合が解かれなければ、その氷も溶けることがない。それが、天草を中心として半径10メートルに展開されている。しかも、氷は周囲から魔力を吸い上げる機能が備えられている。氷は必然的に天草から残り魔力を容赦なく吸い上げ、天草への物理的な拘束力にもなる。地味ながらも、確実な一手だった。
「う……!?」
予想外の搦め手に、天草とて驚きを隠せない。
それでも、天草は己の願いの為に、足掻き続けるしかない。