愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第8章 愛の唄 Ⅶ
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『明日の朝まででいい。貴女をこの両腕で抱きしめながら眠っても、いいですか?』
優しい声と、天草の両腕に包まれて、私は天草と同じ布団で寝ているという状況だ。
「……。」
予想外の展開に、私の頭は全くついていけていない。ついでに、天草が近すぎて、緊張し過ぎて、眠るどころじゃない。近くで、天草の呼吸音が聞こえる。それも、規則正しく、穏やかに。私は、もはや気が気じゃない。というか、天草はこんな状況だろうと、何も思わないのだろうか。あっ、そうか。私が“女”と見做されていないのか。それならばまぁ、分かる。……いくら天草四郎が聖職者だろうと、個人的にはちょっと納得いかない気もするけれど。
「……。」
私の想いは、きちんと天草に伝わったのだろうか。結果だけを言うならば、私の予想通りだった。これ以上の結末なんて、天草四郎という人間には、きっとあり得ないのだ。天草は、彼の存在意義を全て、夢の実現に賭している。あの、人類救済という、途方もない話を実現させることこそが、彼が自らに定めた存在意義の全てになっているのだろう。
およそ、脅迫的であるとすら思うけれど。
そして、私はこうも思うのだ。
誰か、彼に―――――、天草四郎に、ひとこと、言ってあげた人間はいなかったのか、と。
―――――もういいよ。 充分だよ、と。