愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
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「私は、四郎のことが、好き。」
落ち着いてから、私ははっきりと口にした。というかもう、これ以上黙っていることは無理だった。別に、私の想いなんて叶えられることがなくたって構わない。でも、ただ口にしたかった。
「……ありがとう。だけど俺は、貴女の気持ちには応えられない。」
「……うん。そうだね。知ってる。それに、私はやっぱり、天草の夢には反対だし。」
うん。分かっていた。天草はあくまでも、聖杯とかいう、何でも願いが叶う奇跡のアイテムを求めている。それに願うのは、人類の救済。確か、人類をみんな、不老不死にして虚栄の心を鎮め、万人が善き存在であるようにすること。万人が幸福である世界。あらゆる悪が駆逐された世界。そんな世界を創ることだ。彼の夢に、私の存在は不要なものだ。それにやっぱり、どうやって考えたって、私にあの願いは、かなしいもののように思えてしまって、仕方がないのだ。
「じゃあ、何で、俺のことを……」
「え? う~ん……、なんで、だろうね? 理由なんてもう、私にも分からない。気が付けばもう、気になって仕方なかった、っていうか……。私にも、ちゃんとした理由なんて、全然分からない。でも、考え方が違ったって、目の前の人間が素敵だったら、好きになるし……。」
「……はぁ。何だそれ。」
「というか天草くん、さっきから言葉遣いが崩れていってるよ。ってコトは、いつものあの丁寧なお喋りは、あくまでもよそ行きというか、そんな感じ? さっきから、一人称がちょこちょこ“俺”になってるし。本当の一人称は、“俺”だったんだね。うん。私は、そっちの方がいい。」
「……。」
天草は、黙っている。
「ねぇ、四郎? 四郎は聞き入れないだろうけど、疲れたなら、少しぐらい休んでも、良いと思うよ? っていうか私、勝手に四郎のことを呼び捨てにしてるけど、いい?」
「呼び名に関して、好きに呼んでいいと言ったのは私ですし。」
ぶっきらぼうに、天草はそう答えた。
「あ、疲れたなら休む件については、スルー?」
「……。」
彼は、どこかばつが悪そうに視線を逸らした。