愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
「あ、隙あり!」
そう言って、私は天草の右手を、自分の左手で掴んだ。
「?」
天草は、その様子を不思議そうに見ている。
「うん。見れば見るほど、普通の腕なのにね。えっと……、ほう、ぐ? この腕って、その、切り札? なんか、すごい力があるんだよね?」
仮契約?というものをした所為なのか、なんとなくだけれど、そういうのが伝わってくる。いや、伝わってきたところで、その情報が何の役に立つのかすら、私にはわからないのだけれど。
「えぇ、まぁ。とは言え、それほど強力なものでもありませんが。この両腕は、私の生前も、死んだ後でさえも、多くの人々が私を信仰してくれたからこその力です。だからこそ、私はこの力を、人類救済のために使いたい。」
「……、そっか。」
「えぇ。……ひとつだけ、いいですか。」
「何?」
天草は、ひどく穏やかな声で。
「明日の朝まででいい。貴女をこの両腕で抱きしめながら眠っても、いいですか?」
「ぅ、え!?」
あまりにも唐突だったから、私は素っ頓狂な叫びをあげてしまった。
「……いいだろ。そっちが言い出したんだから。」
拗ねたように、天草は呟いた。薄暗くて分からないけれど、顔を赤くしていたら可愛いなぁ、なんて。
ちらりと、窓の外を見る。
――――――夜空はまだ暗く、夜明けは遠いらしい。