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調査兵団は今日もまったりです

第9章 I can smell.



「やっぱり、微妙に香りが違うんだね」

部屋の中央、急遽持ち込まれた小さなテーブル。そこで五人分、五つの銘柄を適当に選びティーカップに注いでいく。

「これだけ揃う機会は中々ないからな。いい経験にはなった。…書類は広げられないがね」

香りは勿論、色味も微妙に違っている。実に贅沢な光景が卓上に広がっていた。


「エルヴィン。私、これにするよ。他は飲み比べしてから決める」

「わかった。モブリット、君はどうする?」

「私はいただけません」

「こんな所でも真面目だな…。では、君の分はハンジに任せようか」

そんなこんなで、お持ち帰り分の内幾つかは後程決めることにしたハンジ。



「おい、エルヴィン。…これを貰うぞ」

「それだけでいいのか?」

「あぁ。…置く場所がないからな」

リヴァイは早々に持ち帰る分を決めたようだ。彼の手により、お目がねに叶ったそれらは静かに脇に寄せられる。



「………」

そんな先の二人とは対照的に、静かにカップを見つめるのはミケ。
彼の視線の先、淹れたての紅茶からは白く温かな湯気とよい香りが立ち上っている。


スン

一つを手に取り、軽く鼻を鳴らす。
初夏を感じさせる爽やかな香りが、喉の奥へと抜けていった。


(これは…)

(カリンの好きそうな香りだな)


ふと、そういえばあんなことがあったな…。とミケは思い出していた。



(カリン……)



ナナバには感じられなかった匂い。
カリンには感じられた匂い。



(確か…『ミケ分隊長の匂い』だったか…)

(さっぱり想像がつかん……)


一体、自分はどんな匂いがしているのか…?


気になりだすと、やはり確かめたくなるのは至極当然のことだろう。



「…ミケ、君は」

と言いかけたエルヴィンの動きがとまった。

何しろ、ミケ本人は紅茶そっちのけで右、左、と交互に自身の前腕を嗅いでいるのだ。正直、お茶会らしからぬ姿。


「え、何々?いきなりどうしちゃったの?」

「他人の匂いを嗅ぎすぎて、とうとう頭がイカれたか」

「………」

興味津々のハンジ、思っていることをずばり指摘するリヴァイ、驚き沈黙するモブリット。



そんな四人をよそに、暫く自身の匂いを嗅いでいたミケはおもむろに顔を上げる。


と、真向かいに佇む人物へと口を開いた。


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