第10章 待ち望んだこの日
「ね、カリン、教えてよ」
はためく洗濯物の数々。
「だーめ。ふふ」
風にあおられまるで波の様にも見えるそれらをぬって歩く、二つの影。
にょぉ…
すぴ… すぴ… すぴ…
「ふふ、ミケ君お昼寝してる」
「どう?穴場でしょ?」
「うん。静かだし、よく陽はあたるし。
でも……ここ本当にいいの?」
「分からない。
多分だめだと思う」
「!」
「だから、バレたら一緒に怒られてくれる?」
「もう、ナナバってば…」
「ま、大丈夫だよ。
今まで誰にも会ったことないし」
今二人がいる場所。
兵団の敷地内、隅の隅のさらにまた隅。
何かがあるわけではないが、
森のような、そこまではいかないような…
そんな感じに生える木々に囲まれる形の、少し開けた場所をナナバが見つけたのは数週間前。
それ以来、これ幸いとナナバは足しげく通い、自分専用の物干し場として使っている。
そして今日、時たま『場所が無いの』と言っていたカリンを秘密のここへ"ご招待"した。
「…よし、これで全部だ」
「私も、丁度終わり」
「これだけあると壮観!」
「うん。
乾けばお日様のいい匂いもするだろうし、
ちょっと楽しみね」
(…匂い…)