第9章 I can smell.
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そんな微笑ましい?やりとりから数日後、団長室には幹部組+1が集まっていた。
「忙しいところすまない。これを渡したくてね」
「先日、君達が出向いてくれた際のお礼として届いたんだが…」
「うわ、すごい量だね」
ハンジの視線の先、エルヴィンの執務机にはうず高く山と積まれた紅茶の缶。
「………」
黙って見つめるリヴァイの目は、左から右へ、上から下へと規則正しく行ったり来たりを繰り返している。どうやら吟味しているようだ。
紅茶缶の隙間から顔を覗かせるエルヴィンはというと、さらに机の陰や脇に置かれた箱からも次々と取り出しては芸術的なまでに綺麗に積み重ねていく。
「……さぁ、好きなだけ持って行ってくれ」
ようやく全部並べ終えたのか、エルヴィンは少しばかり疲れたように語尾を切った。
「そう、言われてもな」
そのあまりの量に、少々引き気味の声で答えたのはミケ。
何しろ、飲みきるまでにどれだけ掛かるかわからない程の数である。
「あぁ、見ての通りだ。量も種類も多くてね」
「不思議なんだが、まるで示し合わせたように紅茶、紅茶、紅茶…。まるで紅茶攻めだ」
珍しいエルヴィンの困り顔は、机の向かいからは見えない。もう隙間がないのだ。
だがしかし、頼れる団長は一つの策を用意していた。
「もし、君達が良ければだが…、余った分は食堂か談話室にでも置いて皆で楽しめたらと考えている。どうだろうか?」
「あぁ、それでいい」
間髪入れずに答えるリヴァイ。
「同じく賛成。ついでだ、今いただいてみようよ。ほら、丁度お菓子持ってるから!」
懐から小さな紙袋を取り出すハンジ。
「…それは、いつ手に入れた?」
スン、と鼻を鳴らしては警戒するミケ。
「大丈夫大丈夫!モブリットはお腹壊さなかったよ」
「あの、それはどういう意味で…」
そして、上司の一言に若干青ざめるモブリット。
スン、スン
「安心しろ。少し過ぎてはいるが…変なものは入っていない」
「そうですか、よかった…」
「って、過ぎてる…?何が過ぎてるんですか!?」
「よし。では、試しがてら…お茶会にしようか」
(団長にスルーされたよ!俺、大丈夫かな!?)
こうして、皆でいくつかの茶葉をテイスティングすることになった。
…怪しいお菓子と共に。