第1章 猫と団長と伝言ゲーム
「何だ?……こら、するなら外でしなさい」
エルヴィンのそんな穏やかなお説教など聞こえない。
ハンジは楽しそうに逃げ、リヴァイは鬼の形相で追いかける。
そんな中でもミケは相変わらず眠り、書類を暖めていた。我関せずといったところか。
これでは小説に集中出来ない…さて、まずは走り回る二匹のうちどちらかを、とエルヴィンが思った瞬間。
ぶっみ"ぁ"!!!
逃げるハンジがミケを踏み越えていった。そして間髪いれずにリヴァイも同じく踏み越えていく。
ん"な"ぁ"…
「大丈夫か?ミケ」
恐る恐るミケへと手を伸ばすエルヴィン。
猫の生態については知識が乏しい為、どこが痛いのか、医者に見せるべきなのか、如何せん判断に迷ってしまう。
ふらふらと立ち上がると、ミケはゆっくりと頭を振る。
なぁぉ
大丈夫だ。まるで安心させるように一鳴きし、伸ばされた彼の手の平に自分の頭を押し付けると、同じ場所、書類の上に再び丸くなった。
「そこに居ては危ないぞ?いや、まずはあれを止めるのが先だな」
いまだ元気一杯に追いかけっこをする二匹を捕獲するため、席を立つエルヴィン。
もう何週目だろうか、飽きもせず走り続ける二匹は執務机に二度目の特攻を仕掛けた。
流石にミケを踏みつけはしなかったが、その近くに置かれていたインク瓶をひっくり返す。
豪快に緑のインクを浴びるミケ、もとい三毛猫。体毛は三色から四色へと変わっていた。