第7章 リヴァイとリヴァイと気になるあの人
「あの、お花はいかがですか?」
カリンを待つリヴァイに、小さな少女が声を掛ける。
細く頼りなげなその腕には、使い込まれたバスケット。その中には野辺で摘んできたであろう花々が、控えめにその花弁を揺らしている。
「いらねぇ」
「……」
「それよりも…お前、俺が怖くないのか」
そう尋ねたのは、何故なのか…。自分でもよくわからない。何となく口をついて出た。
「…?こわくないよ?」
「ほぅ、ずいぶんと度胸があるな」
「どきょう?」
「恐いもの知らず、ってことだ」
子供に接する機会はそうそうないが、大抵、初対面であれば怖がって腰が引けている。
顔か、雰囲気か、理由はわからない。…わかったところで、変えようもないのだが。
「こわくないよ、とってもやさしそう」
「は?」
自分が優しそう?
いや、自分では優しいと思う。少なくとも人並みには。どうしてか、周りにはそう素直に評価しない人間が多いのが少々不満といえば不満だが。
「あのね、おねえさんをみてるかお、すごくやさしかったの」
「…っ!」
「おい、今言ったことは…誰にも言うな」
「どうして?」
「どうしても、だ」
さて、どう説明したものか…。いやそれよりも、そろそろカリンが戻ってくる。
ふと、籠の中身に目をやれば、丁度いいといくつかを選び出す。
「そこの、それとそれだ。寄越せ」
「え?よこ?」
「違う。買う、と言ってるんだ。早くしろ」
「ありがとう!ちょっとまってね」
そう笑って言う少女は、手際よく花を束ねだす。
「はい、おまたせしました」
「あぁ…。ほら、落とすなよ」
リヴァイは少女の手に硬貨を握らせる。
「!!!、おおいよ、おつりない…!」
「いらねぇよ。そんなことより、さっさと家へ帰れ」
「でも……」
「いいから帰れ。もう暗くなる…心配させんな」
リヴァイは乱暴に少女の頭を撫でる。おかげで髪はくしゃくしゃだ。
「ふふ、やっぱりやさしいね。ありがとう!」
ばいばーい!と元気よく手を振りながら走り去る小さな後姿。この人混みに慣れているのだろう、あっという間に見えなくなった。