第5章 時間じゃないが、全員集合
酒のせいか体が熱い。
いや、きっと…それだけではないだろう。
(少し、涼みにいくか)
わふ?
「お前も来るか?…よし、散歩だ」
時折吹く夜風が、火照る体に心地よい。
二人はあちこちを見て回りながら、ゆっくりと歩を進めていく。
「あの角を曲がれば食堂だ」
わふん
!
ふん、ふんふんふん… ワン!
「…ん?」
なにかに気付いた"エルヴィン"、その視線の先には細身のシルエット。
「団長、お疲れ様です」
「ナナバか、ご苦労。朝までかな?」
「はい。あの、その子は…もしかしてマスコット的な?」
ナナバは優しく目を細めると、犬の頭から背にかけてゆっくりと撫でてやる。
「あぁ、今日からだ。よろしく頼むよ」
「はい」
ぱたぱたぱた
「ナナバだ、よろしく。名前は…"エルヴィン"ですか?」
「わかるか。流石だな」
「いえいえ、そんな。実は昼間に揃っているところを見かけまして」
「成る程」
"エルヴィン"を撫でる手を止め軽くかぶりを振れば、ナナバは真剣な瞳で真っ直ぐにエルヴィンを見る。
「…団長、失礼を承知で申し上げてもよろしいでしょうか」
「構わん、言ってくれ」
「お手柔らかにお願いしますね?」
今度は柔和な笑顔。
軽く小首を傾げる仕草は、なかなかに可愛らしい。
「ほう?それはつまり」
「親心です。うちの息子はなかなかにメンタル弱めなので」
「やめろ、とは言わないのか?」
ナナバはその細くしなやかな指を顎に添え、うーんと考え込む。
「そうですね…。まぁ、結論から言いますと、きっと大丈夫なので」
「手強い、か」
「はい。でも息子の方ではありません」
エルヴィンに向き直れば、悩んでいた割には自信たっぷりに答える。その表情は何だか楽しそうにも見えた。
「なに…?」
「手強いですよ、カリンは」
「はは、そうかもしれないな。忠告痛み入る。ありがとう」