第5章 時間じゃないが、全員集合
(それにしても…デカいな…)
立ち上がった"エルヴィン"の顔は、ミケとほぼ同じ高さ。そんな彼は、嬉しそうに尻尾を振りながらカリンの匂いを嗅いでいる。
(コイツと俺と、やはり犬には敵わないか?)
鼻がきく、という共通点からか妙な親近感が沸いてくる。意識が明後日の方向にいきかけたその時、
「あの…エル、君、ごめんね。ちょっと重い…かも」
なんとか絞り出したであろう声。
「おい、そろそろ手を離せ」
わふ… くぅん…
今度は、ごめんなさいをするようにカリンのお腹にぐいぐいと頭を擦り付ける"エルヴィン"。
「大丈夫、怒ってないよ。みんないい子」
「みんな…そういえば、ミケのとこにもいたよね」
「あぁ。今朝部屋を出たきり見かけていないが」
何の気なしにミケが辺りを見回せば、どこからともなくのんびりとした鼻歌が聞こえてきた。
遠目に見えたのは、白黒茶の三色。
「お、もしかしてあの子かい?」
「はい。とても優しい、いい子なんですよ」
「俺への当たりは強めだがな…」
「デブ猫」
「リヴァイ、彼は標準より大きいだけだと思うぞ」
んな んな んな~
「…どうした、猫」
「こんにちは、ミケ君。お散歩?」
ここにもれなく、全員集合。
その光景は、一見するとペット談義に花を咲かせるご近所の皆さん、に見えたとか…?