第5章 時間じゃないが、全員集合
にゃあぁぁぉあぁあ!
それぞれに耽る二人が絶叫に振り向けば、遠くから走りくる茶色い塊。
(ハンジ、だったか)
あっという間に足元までくると、カリンとミケを交互に見る。
「どうしたの?お散歩かしら?」
にゃあ!
快活な瞳でミケを見据えると、するりするりと迷いなく登っていく。肩口までくれば、まるで隠れるように広い背中へ張り付いた。
「おい……」
「くす。かくれんぼしてるの?」
にゃ、と小さく鳴いたかと思えば、同時に何かを呼ぶ声が風に乗って届く。
『おーい、猫~!わたし~!どこ~?』
『なんだ、その間抜けな呼び方は』
『え、ハンジだから。そりゃ私って』
『バカか』
『うーん、どこに行っちゃったのかなぁ』
『一体どんな躾してやがる』
『ん?うちはね、自由にのびのびと、だよ』
『…はぁ、そのまんまじゃねぇか』
「いいじゃない、可愛いし」
「理由にならねぇよ」
近付いてきた二人。
一人の肩には、すました顔で黒猫が乗っている。
「おはようございます、兵長、ハンジ分隊長」
「おはよう。お、二人とも、相変わらず仲がいいね」
「…おい、いたぞ」
挨拶もそこそこに、リヴァイはミケの背後に回り込む。そして背中から"なにか"を勢いよくひっぺがした。
「あーーー!いた!!!」
「チッ、手間かけさせやがって」
にょぁ…
ミケの陰から現れた人類最強の手には、"ハンジ"こと茶猫がぶら下がっていた。