第4章 空色カメラ
わふ
「…ん」
(なにか、聞こえたような…)
そっと瞼を上げれば、ぼやける視界に寝てしまっていた、と徐々に意識が覚醒してくる。
軋む体を起き上がらせつつ何度か瞬きを繰り返した時、ふと見えた"なにか"。
ゆっくりと顔を上げれば、部屋の中央には犬がいた。
(またか…!)
(ここは動物園にでもなったのか?)
はっきりとしてきた視界で真正面から捉えれば、二つの澄んだ空色が自分を真っ直ぐに見つめていた。
「…!」
「いや、まず、どこから来た?どうやってここに入った?」
訝しがりながらも視線だけで部屋を見回せば、朝来た時から何一つ変わっていない。
「いたずらはしていないようだな」
そう言い立ち上がれば、両肩に感じる違和感。
そっと触れればそれがよくよく見知ったものであることがすぐに分かった。
「これは…?」
今朝は持って出なかったはず。では、寝ている間に誰かが?
とりあえず脱ごうと手を掛ければ、ふわりと漂う甘い香り。
(……!)
「まいったな」
この香りには覚えがある。
誰かのように鼻を摺り寄せるわけではないが、気付いた時には覚えていた香り。
(そうか、これはあの時の…)
ミケ猫と共に手渡したマント。
まさかこんなにも彼女を纏って、自分の元へ戻って来ようとは…