第4章 空色カメラ
「んん~」
カーテンの隙間から朝日が差し込み、目を覚ましたカリンは大きく伸びをする。
窓を開ければ、微かではあるが人が動き出しているだろう気配をそこかしこから感じた。
起き抜けの者、既にきっちりと着替えて活動しだしている者、夜通し警邏についていた者は欠伸をかみ殺しているに違いない。
いつもと同じ朝だ。
無意識にほっと胸を撫で下ろすと手早く朝の支度を済ませ、エルヴィンのマントを取り出す。
丁寧に布で包むと大事に抱えて部屋を出た。
(こんなに朝早くからなんて、ほんとうにお忙しいのね)
朝一番で返しに行く、これには理由があり、またそれが許された。
まずは、早く返さなければという思い。
猫と共に受け取ってからもう何日か経っている。いつまでにと言われたわけでもないが、いやそもそも、あの時は"ミケ"猫のことしか言われなかった。
(私も、うっかりと聞きそびれていたのよね…)
あわせて日々の忙しさもあり、気付いたらこうして時間が経ってしまっていたのだ。
そして朝早いことが許される理由。
それは、エルヴィンは誰よりも早く仕事を始めている、という事実。
当然ながら、手が遅いわけでも、さぼっていることの皺寄せでもない。
少しでも、早く多くこなす。全ては兵団の為、そしてここにいる部下であり仲間である皆の為。
(朝早いだけでなく、夜も遅いようだし)
(時々でも、ちゃんとお休みはとれてらっしゃるのかしら…?)
直属ではないせいもあるだろうが、まとまった休みを取っているなど聞いたことがない。
疲れてはいないだろうか…?
(お見かけする時には、いつも何もないように見えるけれど)
実際には、疲れていたとて表に出すようなことはないだろう。なんとなくだが、そういうことは隠すのがうまいのではないか…そんな気がした。