第4章 空色カメラ
見えてきた団長室の扉、その前には"なにか"がいた。
「犬…?」
扉の前で目を閉じ寝そべるその姿は、紛れもなく犬。
体に張り付くような短い被毛は極々薄い茶色。そして金色に輝いて見える程に艶がある。
大きな三角形の垂れ耳、頭を乗せている長く太い脚と、それに見合った大きな足先。胴体もしっかりと筋肉がついているようで、立ち上がればかなりの大きさであろうことがわかる。
…しかし、何故ここに犬が?
足を止めじっくりと見ていたカリンに気付いたのだろう、犬は顔を上げ彼女を見やる。
「!」
開いた瞼のその中心、犬のその目、確かに見覚えがあった。
まっすぐにカリンを見つめるその色は、あの人物と同じ澄んだ空色。
「エルヴィン団長…?」
ワン!
思わず名を口にすれば、当然のように返ってくる鳴き声。
自分の名前は"エルヴィン"だと、そう答えているようだ。
「…不思議なことが、起こるものね」
可愛いマスコットの"ミケ"猫を思い出す。
驚かせないよう"エルヴィン"にそっと近づけば、立ち上がり嬉しそうに尻尾を振る。
「はじめまして。君はどこから来たの?」
そう問われた彼は、目の前の閉じられた扉へと視線を移す。
「……?」
「いけない、返さなくちゃ」
両腕で抱えていたマントを今度は片手で抱え直し、細やかな装飾が彫り込まれた扉を数度ノックした。
…
「エルヴィン団長?」
「いらっしゃいますか…?」
……
暫し待つも、返事はない。どうやら不在のようだ。
「どうしようかしら…」
わふ
思わず呟いた瞬間、聞こえてきた鳴き声。そちらへ顔を傾けると、隣で立つ"エルヴィン"がカリンを見上げている。