第1章 猫と団長と伝言ゲーム
当日の朝、正装した三人と私服のエルヴィンの姿が兵団敷地内にあった。
「すまない、宜しく頼む」
「気にするな」
「しっかり休むんだよ?お土産、楽しみにしててね」
「さっさと行くぞ」
ミケの正装久しぶり~!
どうでもいい…
お前は…馬子にも、というヤツだな
これまたわいわいと馬車に乗り込み、程なくして王都へ向けて出発する。
見えなくなるまで見送ったエルヴィンは、ふと昨日やりかけた決裁書があったことを思い出した。
(急ぎではないが…あと少しだったな)
そう考えた瞬間、無意識に足は団長室へと向いだす。
ばれたら、ハンジに怒られるだろうか…?
まるでいたずらを思いついた子供のように、そう想像してはほんの少し口元が緩んだ。
**********
目的の場所に着く、その時。
見えた扉の前、床には何かが置かれている。
(毛!…いや、落ち着け。あれは、動物、猫?)
白に不思議な模様の体毛、普段目にする猫よりも二回り程大きいようだ。
扉に向かい、姿勢を正して座っている。
驚かせないようにそっと反対側の壁に寄ると、毛、もとい猫は一匹ではないことを確認する。
進行方向手前から一番大きな白猫。
その隣には少し小さめの茶色い猫。
さらにその隣、三匹の中では一番小さな黒猫。
黒猫と茶色の猫は、白猫の大きさにすっぽりと隠れていたらしい。
三匹はそろって扉に向い、行儀よく座っている。