第1章 猫と団長と伝言ゲーム
「これは…」
ざっと目を通し内容を把握するミケ。
「……仕事バカが」
同じように把握したリヴァイはいつもの調子で毒づく。
「二人はどれにする?どれでもいいよ。あ、でも早い者勝ちだから」
まるで、おやつの甘味を選べとでも言うようにそれらを指差すハンジ。
「俺はこれにしよう」
「じゃ、私はこれ!」
「…チッ、貸しだぞ」
三人はそれぞれに招待状を手に取ると、出席の意向を伝えるためサインをする。
「いつ見ても、ミケは綺麗な字書くよね~。そうだ、この間代筆してもらったアレ、完全に女の子からだと思われてたよ」
「…くだらんことに使うな」
「お前は相変わらず汚ねぇな」
「個性的って言ってよね!それにモブリットは何でも読めるし、問題ないよ!」
文字一つだけでわいわいと楽しそうにする三人。
あれだけ困っていた招待状も、気付けば問題なく全て出席とされている。
「…エルヴィン」
ミケは落ち着いた口調で呼び掛ける。
「頼れ。…頼るのが心苦しいなら、使え。何の為に俺達がいると思っている」
「そうだよ。仕事しすぎ、一人で頑張りすぎ、もしかして私達に心配されたいの?」
「辛気臭い顔されちゃ、こっちの気が滅入る」
それぞれに気遣ってくれる、部下であり、友人でもある三人。
「ありがとう」
柔らかな笑みを浮かべ、素直に謝辞を口にすれば強張っていた肩の力が抜けていく。
恵まれている、エルヴィンは心の底からそう感じていた。