第2章 ミケとミケと気になるあの人
遠くから、楽しげな声が聞こえてくる。
ぼんやりと窓の外を見れば、もうすっかりと夜の帳は下り、夕食後の談笑がそこかしこで花開いている。
「ん……」
ミケはゆっくりと起き上がると、備え付けのシャワーを浴びるため礼服を無造作に脱ぎ捨てていく。
(あぁ…皺だらけだな)
(当然か、そのまま寝たのだから)
こんな姿を見たら、なんと言うだろうか。
『分隊長?ちゃんと着替えてからでないと…風邪をひいてしまいますよ?』
そんな風に説教されるだろうか。
それとも
『皺になっていますね…暫くお預かりしてもよろしいでしょうか?さ、着替えはこちらを』
まるで妻のように、世話を焼いてくれるのだろうか。
(俺は、何を)
まだ夢でも見ているのか、そう思い冷水を全身で浴びる。
(落ち着け。今だけでも)
「……ふ」
あまりにも先走った想像…
俯き薄く笑えば、重く濡れた前髪から冷たい滴がぽとりと落ちた。