第2章 ミケとミケと気になるあの人
「はぁ………」
(本当に、今日は何なんだ…)
ライバルなどと謎の警告を受け、自分は風呂だと驚かされ、今はまた何人かの団員とすれ違えば明らかに普通とは違う態度。
何がいけないのだろうか?
皆自分を見ては驚いて目を見開き、そして感嘆符を口にしていた。
労うため声を掛けようとすれば、顔を真っ赤にして無言で走り去る者まで。
(分かっている、自分でもそう思う)
(この格好は似合わん…)
…実はその真逆であった。
中々に見かける機会の少ないミケのフォーマル。
普段とのギャップに女のみならず、男まで見惚れていたことなど、当の本人は知る由もない。
やっと部屋に着けば、気が緩んだのかどっと疲れが襲いくる。
朝から着慣れない服を着、何度会っても慣れない人種の相手をし―正直に言えば苦手だ、帰ってからもこんな具合であれば尚のこと。
(エルヴィンには頭が上がらんな)
真意こそ計りかねるが、何事も常に上手く立ち回る。そして結果を出す。
そんな彼の代わりは、果たして務まっただろうか?
招待状の主の反応は、それなり、だったと思う。大きな失敗はしていないはずだ。
(後は、任せても大丈夫だな…?)
(いや、たまに確認しなければ。また、一人で、抱え込む…)
感じる疲れに混じり、波のように寄せてくる眠気。
夕食の前に、ほんの少し…
シャワーはそれから…
そう思えばベッドへと仰向けになり、静かに目を閉じる。
あぁ、着替えを…
いやいい、暫くこれの出番はないだろう…
前髪をかき上げ、そのまま顔の横へと置けば指先に触れるもの。渡しそびれた彼女への土産。
(カリン…)
声に出さず呟くと、そのまま微睡の海へと沈んでいった。