第2章 ミケとミケと気になるあの人
「その人は、今日、お忙しい団長の為に代わりに朝から出掛けられて」
優しく湯をかけてやりながら、ふふ、と笑む。
ミケ猫は桶の縁へと顎を乗せ、気持ち良さそうに目を閉じた。
「ご自身もとても忙しいのに…優しいわよね?」
それからね、とても尊敬しているの。そう付け加える。
優しく仕事の出来る上司、部下であれば当然だろう。
温かな湯の張った桶の中、ミケ猫は静かに耳を傾けている。
「もうすぐ戻られる頃ね。ミケ君も、会えばきっと好きになるわ」
天井の何処からか、滴の落ちる音が数度響く。
「……好き」
小さな呟きにミケ猫はそっと瞼を上げる。