第2章 ミケとミケと気になるあの人
人気の無い浴場。
湯気の向こうには、一つの人影と一つの風呂桶。
「よかった、綺麗になったね。どう?他に気になるところ、ある?」
ミケ猫はインクをすっかり落としてもらうと、今は桶の中でのんびりと湯に浸かっている。
うにょぉ…
気持ち良さそうなその姿に『大丈夫そうね』と、そう呟いては桶を湯船の脇に置き同じく湯に浸かる。
「ふぅ…気持ちいい…」
んな
「うん。温まると、落ち着くし、ね……」
そう言いカリンは天井を仰いだ。
その顎から首筋にかけて、湯の滴が滑り落ちる。
暫しの沈黙。
「……あのね、聞いてくれる?」
天井を見つめたまま尋ねれば、隣からは『んな?』という鳴き声。
返事があったことに安心すると、視線はゆっくりミケ猫へ。
「…私、気になる人がいるの」
そっと桶の縁を撫でつつ、小さな声で告白する。
「とても優しくて、とても素敵な人」