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調査兵団は今日もまったりです

第1章 猫と団長と伝言ゲーム


「失礼します、お呼びでしょうか」

続いて現れたのはカリン。
先に訪れた二人と同じく、入室後に右手を自身の胸へと添える。

「度々すまない、どうしても君に頼みたいことがあるんだ」

敬礼を解くよう伝えつつ机の下を覗き込む。

隠れるように丸くなっているインク塗れのミケを手招きする。
が、しかし、先刻の憤怒のエルヴィンを警戒してか中々出てこようとしない。

仕方ない…
カリンを呼び机の下を見てくれと頼む。

「…猫?」
「ミケだ」

え?と思わず零す彼女に、ほら、額の模様と三色の毛が、と説明するエルヴィン。

「本当ですね、可愛い」

「実はインク瓶が…まぁ、いろいろあってな。すまないが風呂に入れてやってくれないか?」

ほら、彼女なら恐くないだろう?
そうエルヴィンが言うと、そろそろと机の下から姿を現すミケ。
自身のマントで包みそのままカリンへと手渡す。

「はい、でも私でいいのでしょうか?この子は団長の飼い猫では…?」

「いや、違う。が…」

今朝と同じく、いたずらを思いついたような表情を浮かべ三毛猫の耳元で囁く。
『男二人、風呂でじっくり語り合うのもいいな?』と。

それを聞くや、三毛猫はびくっと体を震わせマントの中にもぐりすっぽりと全身を隠す。
そして助けを求めるかのように、カリンの胸にぐいぐいと頭を押し付けた。

「…はは、これはまた随分と」

「あ、あの…?」

困惑しているカリンの前で『すまない』と涙を浮かべつつ笑いを堪えるエルヴィン。

(毛色や模様だけではなく、中身まで"ミケ"か)

カリンの腕の中、もう甘えるようにうにゃうにゃと鳴いている。
どうやら三毛猫は、一目見た彼女にすっかりと御執心のようだ。

「…綺麗にしてもらうといい」

そう言うと、エルヴィンは三毛猫の頭をマント越しに優しく撫で、団長室を後にする一人と一匹を見送った。


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