【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第6章 The reality is a ruthless
「それ…どういう意味かちゃんとわかってて言ってますか?」
自分より身長の高い後輩に、胸ぐらを掴まれて見下ろされている。
そんな状況にも関わらず、月島が隠そうともしない自分に向けられた憤りに、返って冷静になる自分が居た。
普段は感情をここまで表に出さない奴なのに…こいつ、本当に皐月の事が好きなんだな…。
そう思うと、既にわかっていたはずなのに、敗北感が改めて俺の全身を包み込んだ。
月島との話し合いに選んだのは第二体育館の裏だった。
手入れもされず、草木が鬱蒼と繁るだけの空間は、他の生徒を寄せ付けない。
「何ですか。俺が知らなきゃ後悔する話って。皐月と付き合ってるとか、そういう事なら、わざわざ言われなくたって…あの状況見たらわかります。」
月島があの状況と、数日前に部室で目撃された状況を苦い顔で口にした。
俺はそれよりも皐月の呼び方の方が気になった。
月島は…月島だけは皐月を下の名前で呼ぶ事を許されていた。
和奏と…。
俺も含めた排球部の連中が、その名を呼ぶ権利を求めて幾度となく皐月に挑んだが、その度にそれとなくはぐらかされ、月島にだけ許されていた和奏という呼び名。
それが嫌でも2人が思い合っている事を周りに知らしめていたのに…。
特別な呼び名を捨てた…皐月の特別な存在でいる事をやめた月島を見る。
皐月は…。
月島に皐月と呼ばれた時の皐月はどんな気持ちだったんだろう。
後悔が後から後から積み重なって、押し潰されそうな重みに胸が苦しい。
「そうじゃない。あれは…違うんだ。皐月の同意があっての事じゃない…。」
自分の罪を口に出すと、胃の奥から吐気が迫り上がってくる。
苦々しい気持ちで月島を見れば、目を見開き、見たこともないような表情でこちらを見下ろしていた。