【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第6章 The reality is a ruthless
side 月島 蛍
訳がわからないって思ってた。
及川さんだけじゃなく、菅原さんとも親しげな和奏を理解出来なくて…。
僕なんて揶揄われて、遊ばれてただけなんだと認めたくなくて…。
数日ぶりに登校してきた和奏を皐月と呼んだのは、僕の唯一残った強がりだ。
それぐらいの虚勢を張らないと、彼女とただのクラスメイトとして向き合うことなんて出来なかった。
傷付いたような顔でこちらを見る和奏を見て、僕にはやっぱり理解出来ないって思ったんだ。
でも…。
目の前の菅原さんの表情を見れば、嘘など付いていない事は明白だ。
嘘であれば、どんなにいいか。
このまま和奏を理解出来ないままの方が良かった。
和奏は酷い女だって思っていたかった。
「それ…どういう意味かちゃんとわかってて言ってますか?」
和奏はあれらの行為がどういう意味を持つか知らなかった。
菅原さんも最初は驚いたが、幼馴染の及川さんがそうなるように仕向けたらしい。
だからって…許される事じゃない。
何も答えない菅原さんに、苛立ちだけが募る。
「それが…全部本当なら、僕は菅原さんの事が許せません。」
もはや、何に苛立っているのかもわからない。
卑怯な行いをした菅原さんに苛立つのか、
信じがたいくらいの壮大な嘘を和奏に吹き込んだ及川さんに苛立つのか、
そんな卑劣な奴らを簡単に信じた和奏に苛立つのか…。
和奏の気持ちを信じずに、傷付ける言葉を言った自分自身に苛立つのか。
「月島が…そう思うのは当然だと思う。」
何に同意されたのか一瞬わからなくなり、苛立ちに押しやられた記憶を辿ると菅原さんへの怒りが肯定されたのだと気付く。
この人は…。
全身を巡る怒りを拳としてぶつけようとして、思い止まる。
この人は、何故これを僕に知らせたんだ。
知らなきゃ後悔すると、知る必要があると言って…。
知らなきゃ後悔しただろう。
知ってしまっても後悔しているくらいなのだから。
でも、知る必要があっただろうか。
今更、僕が知る必要が…。
「何で…僕に話したんですか?僕に…どうしろって言うんですか?」
「それは自分で考えろよ。」
真っ直ぐこちらを見つめ返す菅原さんの視線は、鋭く、何故か僕が責められている気分だった。